社会不安障害について
社会不安障害(SAD)とはどんな病気?
対人、社交の場面で「恥ずかしい思いをする」ことに対して、強い恐怖や不安を感じる病気です。その状況を避けようとするあまり、学校や会社に行けないなど、日常生活に支障を来たすこともあります。
アメリカでは7〜8人に1人がこの病気で苦しんでいるといわれています。
発症年齢は、10歳代半ばから20歳代前半で発症し、発症すると症状が持続します。
恐怖・不安を感じる状況
社会不安障害の人が恐怖や不安を感じる状況には、さまざまなものがあります。
- 人前で食事ができない
- 人前で話をするのが苦手
- 偉い人の相手をするのが苦手
- 人前で文字を書けない
- 人々の注目を浴びるのが怖い
- 初対面の人に会う・話をするのが苦手
恐怖・不安から身体にさまざまな症状があらわれます。
- 顔が赤くなる、青くなる、大量の汗をかく、頭が真っ白になる、めまい
- 声が震える、声が出ない、食事がのどをとおらない、口が渇く、息苦しい
- 尿が近い、尿が出ない
- 手足がふるえる、動悸
- 吐き気、胃腸の不快感
社会不安障害の成因
単なる「内気」や「恥ずかしがり」とは異なり、治療可能な疾患です。
詳しいことはまだ解明されていませんが、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、神経が過敏な状態に置かれることによって発症するといわれています。
また、大勢の前であいさつや発表の場面で異常に緊張していることをふと自覚した、などのできごとがきっかけとなって発症することがあるといわれています。
社会不安障害の診断
社会不安障害は、M.I.N.I(the Mini-International Neuropsychiatric Interview)という面接法により診断することができます。
重症度の評価には、主にLSAS-J(Libowititz social anxiety scale)という尺度が用いられています。恐怖や不安を感じやすい「行為状況(自分以外の人がいる状況で何かを行う)」13項目、「社交状況(社交的な状況で何かを行う)」11項目について、その状況における恐怖や不安の程度、避けようとする程度を評価します。
社会不安障害の治療
社会不安障害の治療には、心理療法(認知行動療法)や薬物療法などがあります。恐怖や不安を取り除き、その恐怖や不安を感じる状況を避けようとする行動を減らすこと、そして日常生活を改善・向上させ、その状態を維持することが治療の目標です。
■心理療法(認知行動療法)
認知行動療法とは、間違った考え方を正すことで不安を和らげ、今まで避けていた状況に立ち向かう方法を身につける治療です。
- エクスポージャー(暴露療法):恐怖や不安を感じる状況に不安症状が治まるまで居続けると言う方法です。
- ソーシャルスキルトレーニング:社交的な場面を想定し、人との接し方を訓練する方法です。
- 不安対処訓練:不安症状がおこった場合の対処法を学ぶ方法です。
- 認知修正法:人と接する場面において、必要以上にダメだとか人に不快感を与えているなどといった誤った考え方を修正させる方法です。
- 森田療法:恐怖や不安を取り除こうとせずありのまま受け止め、考え方を変えていく方法
■薬物療法
社会不安障害の治療薬はSSRIを投与します。治療は長期にわたりますので症状が十分改善した後も、一定期間は服用することが大切です。
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